とあるKSDDのアイドル考察録

アイドルオタク9年目のKSDDがアイドルに関して色々考えてみます

あの日も今日のような風が吹いていた ~tipToe.に残された時間~

僕がその発表を見たのはTIF1日目の帰り道でのことだった。

 

「こう来たか…」と思った。tipToe.は活動期間が3年と決められているグループだ。今年のTIFは2期の初期メンである未波あいりと宮園ゆうかがtipToe.として出演する最後のTIFだ。何らかの発表がそう遠くない未来にあることはわかっていた。

が、2期tipToe.自体が6月に終了し、3期の予定がない、という結末は想像してなかった。僕はなんとなく、未波宮園の卒業と同時に新メン募集があって、これからもtipToe.が続いていく未来を想像していたのだ。

翌日、僕はSKY STAGEへ向かう長い階段を上り、tipToe.のTIFのラストを見守っていた。1曲目に披露されたのは、先日のワンマンライブで披露された新曲「My Long Plologue」だ。1サビ終わりにこんな歌詞がある。

そうだほら、始まりだったあの日も
今日のような風が吹いていた

この歌詞を聞いた瞬間、僕の脳裏にtipToe.2期と過ごしてきた色んな思い出が去来した。

 

 

始まりの日

僕がtipToe.2期のライブを初めて見たのは2020年9月、2期お披露目ライブのことだった。と言っても、コロナが猛威を奮っていた2020年…会場となったO-WESTの席数は限られており、抽選に落ちた僕は配信で視聴することとなった。

そもそもtipToe.2期のお披露目は2020年4月の予定だったがコロナの影響で6月に延期され、それもコロナの影響で再び延期となって満を持して行われたものだった。…が、お披露目ライブのことは正直何も覚えていない。Twitterも遡ってみたが、感想らしいことは何も書いていない…*1

そういうわけで、僕が初めて生で見たtipToe.2期は新体制お披露目後、半月ほど経って新宿Loftで行われた開歌、tipToe.、グーグールルの対バンイベントだった。しかし、2期になったtipToe.が僕の心をぶっ刺すことは特になく「ホワイトピース良い曲だな~」くらいの感想しかなかった。ただ、宮園ゆうかちゃんの佇まいが好きだったので推すならこの子かな、と思い、行った現場では彼女とチェキを撮ることにした。

2020年だと他には開歌との2マンに行ったくらい。2期新メンとして活動し始めた悠木うたちゃんが脱退してしまい、人数も少なく頼りないパフォーマンスだな…というのが正直な印象だった。

 

2021年に入ってからもちょくちょく現場に顔を出してはいたものの、tipToe.2期の活動初期はコロナ禍に振り回されたり新メンの脱退があったりしてなかなか苦労してたよね…という記憶しか無い。

 

相次ぐ卒業・体制変更

元々予告されていたものではあったが、2021年始めには大きな動きがあった。唯一残った1期メン、日野あみの卒業だ。1期で一緒にやってきたメンバーが1人もいなくなったところでコロナが直撃して色んな予定が狂っていって、ストレスを感じていただろうが、それを感じさせず新メンを引っ張って明るくその活動を全うした彼女は本当に偉大だった。

そして新体制までの一時休止の後、4月には柚月りん、藍田あらんが加入してtipToe.は4人体制となった。ここから2期が本格始動だろうと思い、僕はお披露目ライブに足を運んだが、ここでも僕の心が大きく動くことはなかった。

 

そして、2021年9月、僕が緩く推していたゆうかちゃんが卒業することとなった。卒業公演は下北沢MOSAiCでの開歌との2マンライブ(定期公演)だった。

tipToe.1期ラスト曲「夢日和」を本編ラストに、2期ラスト曲「ホワイトピース」をアンコールに持ってくるのはありがちな演出だが、両方好きな曲だけあってさすがにグッとくるものがあった。特典会では、ゆうかちゃんがオタク一人一人に「幸せになってね」と言ってたのが印象的だった。

そして、それを機に、元々そんなに高くなかったtipToe.に対するモチベーションが更に下がってしまったというのも事実だった。僕はそっとtipToe.の現場の優先度を下げ、対バンで被る時に見る程度となった*2

 

しかし、その後、ゆうかちゃんは2022年3月に体調が回復したという事でtipToe.に復帰することとなった。また、それと同時に、今宵めみ、深見みことの2名も新メンとして活動を開始した。ゆうかちゃんの復帰は僕にとって朗報だったが、開歌に加えてダルフォンやリンワンにもハマり始めた当時の僕にとってtipToe.現場を増やすことはなかなか難しく、復帰ライブも干してしまっていた。

 

 

訪れた転機

そんな風にtipToe.に対するモチベを下げていた僕だったが、転機は唐突に訪れた。「さくら草の咲く頃に」の発表だ。この楽曲は2022年6月に行われたワンマンライブ『unite』で初披露されたもので、月末にはこの楽曲が収録されたアルバムが発売され、MVも公開された。


www.youtube.com

 

このMVを見た時、僕の中で「カチッ」とスイッチが入った音がした。あるいはパズルのピースが揃った、そんなように感じた。

決定的だったのは、DUO MUSIC EXCHANGEで行われたtipToe.、fishbowl、きのホ。の3組によるスプリットツアー・東京編だった。その日のセトリは「Cider Aquarium」から「僕たちは息をする」の激カッコ良い繋ぎがあったり、「茜」、「夢日和」、「星降る夜、君とダンスを」とキラーチューンを連発したり、1期に通っていたオタクをぶっ殺すようなセトリだった。しかし、何より心に来たのは2期メンの魂のこもった「ユナイト」から「さくら草の咲く頃に」だった。少し前まで大してモチベの高くなかったはずの僕が、気が付けば涙を流していた。

 

帰ってきたフェスと声。ワンマン

そして、2022年のTIF、夕暮れのSKY STAGE。最後にやったのは「さくら草の咲く頃に」。奇しくも3年前、1期のtipToe.が「特別じゃない私たちの物語」を歌ったのと同じ場所で、2期のtipToe.はこう歌った。

やっとわかったよ、これでいいんだよ

私たちが紡いでく物語

そうだ、コロナ禍で色んな事が思うようにいかない中でも、彼女達の物語は確かに紡がれていた。それに僕はやっと実感として気づいたのだ。

そこからは沢山の心を打つステージがあった。声出し可で開催されたギュウ農フェス。オタクたちの声が帰ってきたこのステージ。「さくら草の咲く頃に」の落ちサビが心に刺さった。声が消えた世界で戦ってきた彼女たちが報われた瞬間だった。

声の消えた世界で 言えないことばかりが積もっていったよ


www.youtube.com

 

そして今年の6月には全ての魂をぶつけるようなリキッドルームでのワンマンライブ『My Long Plologue』が行われた。そこで未波あいりは言った。

やっとtipToe.になれたと思う。

もともと1期のオタクだった彼女にとっては自分が憧れ続けた「tipToe.」という存在はきっと僕らが思う以上に高い壁だったのだろう。しかし、そんな彼女が自信を持って言ったこの言葉を聞いて(これで彼女達の長いプロローグが終わったんだな)と僕は思った。そして彼女たちの「終わり」の1年が始まった*3

 

 

これから

2期が活動を開始した日に吹いていた風はコロナという「逆風」だった。だが、長いコロナ禍を終えて観客の声が戻ってきて、研ぎ澄まされたパフォーマンス力や素晴らしい楽曲を手に入れ、何より、パズルのピースのように6人のメンバーが揃った。今、彼女たちに吹いているのは「追い風」だ*4。「My Long Prologue」はこんな歌詞で締めくくられる。

そうだほら、始まりだったあの日も
今日のような風が吹いていた

どこまでも飛ぼうよ

きっと彼女達は追い風に乗って10ヶ月でどこまででも飛べる。残された時間、僕達に瞬きしている暇はなさそうだ。

 

 

*1:やはり、配信ライブというのは記憶に残りにくいものなのかもしれない

*2:その頃、開歌にハマり始めていたってのもある

*3:ワンマンの時点では発表前ではあったが、メンバー・運営間で大体の方向性は決まっていたのでは?と推測している

*4:みこしの休養は心配だが…ゆっくり治してね