とあるKSDDのアイドル考察録

アイドルオタク9年目のKSDDがアイドルに関して色々考えてみます

特急元町・中華街行き27分 ~NUANCEの変なワンマンライブ~

今月22日、僕が推している横浜発アイドル、NUANCEのワンマンライブが神奈川県民ホールで行われる。神奈川県民ホールのキャパは2000。結構なチャレンジであることは界隈のオタクならわかってくれるだろう。

この機にこれまで僕が参加したヌュアンスのワンマンライブとその魅力について振り返ってみよう。

 

 

 

ワンマンツアー ”OSU” ツアーファイナル『PEONY

僕がヌュアンスのワンマンライブに初めて参加したのはこの『PEONY』だった。日程は2020年3月10日…新型コロナウイルスが日本に上陸し、皆が未知のウイルスへの不安を感じ始めていた時期だった。当時、大きなイベントは基本的に中止されていたが、地下アイドルの対応は、なんとかイベント開催に漕ぎつけるグループもあれば中止を選択するグループもおり、対応は分かれている状況だった。

ヌュは前者であり、僕自身は漠然とした不安を感じながらも、ライブを優先し、会場であるTSUTAYA O-EASTへ足を運んだ*1。そこで僕を待っていたのは、よくある「地下アイドルのワンマンライブ」を大きく逸脱する体験だった。特に僕が衝撃を受けたのはその演出の特異性だった。

 

O-EASTは大きなメインステージの横にサブステージが作れる構成となっている。開演時間になってもライブ本編は始まらず、サブステージ上で役者さんがミシンで衣装を作るところからスタートする。次いで、メインステージにもう一人の役者さんが出てきてヌュの衣装を着たマネキンを並べ始め、寸劇…というには長尺の演劇?コント?が始まる。

そしてその流れの中でステージ上には紗幕がおろされ、バンドメンバーとメンバーが入ってきて美しいメロディが流れ始める…「wish」だ。曲が終わると同時に、紗幕にライブのタイトルとメンバーのシルエットが大写しになる。

次の瞬間、紗幕が落とされ、一気にボルテージを上げたバンドサウンドが鳴り響き、ライブは本編へと突入していく。僕はこの時点ですっかりヌュアンスの作り上げるステージの虜になってしまっていた。

 

期間限定公開のはずの当時のライブ映像が未だに残っているので掲載しておく。


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その後、ヌュアンスは全国ツアーを行う予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地で行われるはずだった公演は全て延期となってしまった。そして、僕にとって2度目のワンマンライブは本来ならツアーファイナルとなるはずだった、Zepp Yokohamaでの公演だった。


ワンマンツアー”botawnie” ツアー特別公演『okaeri』

この日のワンマンライブはZepp Yokohamaでの開催だったが、コロナ禍の厳戒態勢…座席あり、一席飛ばし、声出しは不可という形式で開催された。

この日のライブはサウンドプロデューサー佐藤嘉風さんのアコギのサウンドで静かに始まった。「青春の疑問符」をしっとりと二階席で歌い上げる4人。そして、案内人ならぬアヌュ内人を劇団鹿殺しの方が務め、この日も演劇風の演出で本編は進んでいった。

特に印象的だったのが鏡を使った演出だ。鏡の前でメンバーが自身の望みを独白していく寸劇から鏡を用いて「yokohama sweet side story」をパフォーマンスする流れは本当に美しかった。

また、この日の公演はクレイジーケンバンドのギタリスト・小野瀬さんが参加したり、非常に豪華な公演であり、赤字であることが公言されている程だった。その豪華さと素晴らしい演出にすっかり感銘を受けた僕はZepp Yokohamaからの帰り道でこの公演のBlu-rayを即申し込んだのだった*2


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『botawnie plus』~tadaima~

その次に開催された大型のワンマンは同じくZepp Yokohamaで約8か月後に行われたこの公演。こちらのワンマンも素晴らしいものだった。前回同様、9人の大所帯による生バンドによって奏でられる「ai-oi」の疾走感!「last a way」の清涼感!「セツナシンドローム」のゾクゾクする感覚!素晴らしい音楽性だ。特にこの日は「ラグジュアリーヌュアンス」と呼ばれるアコースティックなサウンドで始まった「sanzan」に途中からバンドメンバーが次々に加わり、アッチェレランドしていく演出に痺れた。

しかし、この日のワンマンでは演劇風の演出がなされることは無く、その演出が大好きな僕としては一抹の寂しさを覚えていた。そしてこの後のヌュアンスは、みお、misaki脱退、恭美・初音・妃菜加入、珠理脱退…と激動の1年に突入していくことになるが、終ぞこの演出が復活することはなかった。

 

スペシャルワンマン『r-u』、『ーJITEN-』

激動の2022年は2回の大型ワンマンライブが行われた。まずは4月に新メンバーが加入したばかりの時期に強行スケジュールで行われた[r-u]だ。僕は推しのミサキサンが脱退した後、どういう気持ちで見ればいいのか、という不安を抱えつつ、3度目のZepp Yokohamaに足を運んだ。そして、結論から言うとシンプルに僕はヌュアンスが好きなのだということを実感したライブだった。

この日、特に印象的だったのはやはり新メンが歌詞に組み込まれた「ミライサーカス」だろう。この曲はメンバー一人一人が担当の動物を受け持つのだが、4人体制が終わってからはほとんど封印されていた楽曲だった。この曲を新メンバーが入って新たな動物を受け持ち*3、歌うのはなんだか感慨深いものがあった。

この日全体的に感じたのはちゃんと新メンがヌュアンスやってるなぁ、という事だ。恭美ちゃんはさすが前世アリの堂々としたパフォーマンスだったし、妃菜さんもしっかり声が出ていたし、初音さんも新しいタイプの声で存在感を出していた。しかし、それを「ヌュアンス」として成立させるためにはパフォーマンスを引っ張るわかちゃん珠理ちゃんの尽力あってのものであり、僕はそういうことをしみじみと考えながらZeppを後にした。

本来は再演が翌月に行われるはずだったのだが、メンバーのコロナ感染などもあり、再演というよりはアップグレード版として『ーJITEN-』が10月に川崎CLUB CITTA’で開催された。こちらは花道を使った新たな演出が印象的なものだった。

 

 

ヌュアンスのワンマンにおける「音楽」

ヌュアンスのこれまでのワンマンを振り返ってみたが、もう少しその音楽的な観点についても紹介したい。

 

自由なバンドが生み出すグルーヴ

まず最大の特徴として挙げられるのが、バンド編成の豪華さである。要は人数が多い!ギター2本、ベース2本、キーボード1台、ドラム2台、パーカッション2台、サックス1本、トランペット1本*4と、地下アイドルとしては豪華すぎる編成である。

そして、そのバンドメンバー達はメンバーのことを気にせず、好き勝手に音に乗って遊んでしまう。特にこの「ルカルカ」の映像でセンターに陣取るおじさん二人、パーカッションのHIDEROWさんとサックスの栗原健さんは二人でセッションしてるのか?というようなパフォーマンスを見せつける。


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他にもドラムを放って踊りだすドラマーがいたり、とにかくヌュアンスのバックバンドは自由だ。しかし、そんな自由なバックバンド達が奏でる音楽には謎のグルーヴが生まれる。正直このバックバンドの演奏を聴くだけでも値打ちアリだろう。

 

大所帯ならではダイナミクス

加えて、この大所帯バンドが生み出すダイナミクスは圧倒的だ。特に僕がそれを感じるのは「雨粒」だ。極限までに音数を絞ったサウンドにメンバーの歌声が重なる落ちサビからダムが決壊するかのように9人のバンドが轟音で大サビをかき鳴らす。その度に僕は涙する。こちらの動画の1:07~のところだ。


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奇妙な楽曲

そもそもヌュアンスというグループの楽曲はどこか奇妙さを孕んでいる。ヌュアンスの代表曲と言えば真っ先に名前が挙がるのが「タイムマジックロンリー」だろうが、その癖になるサウンドに沢山の人が虜になり、2019年のアイドル楽曲大賞では4位にランクインした。以下はコメントの一部抜粋。

  • 2019年の大賞は、前半でこの曲に決まりでした。変な曲だと思うけど、耳に残ることこの上ない。
  • 2019年は「タイムマジックロンリー」の年でした。奇天烈な発想でありながら、ポップで中毒性のある楽曲に仕上がっていると思います。
  • アクの強いリフ、暴れまくるベース、しれっと流れているパーカッション、そんな曲をバックに爽快なユニゾンで詰め込まれた歌詞を歌うnuance。どうかしている。でもこれが異世界の人に恋してしまった主人公と、時の流れに翻弄されるタイムトラベルが完全に表現できていてすごいと思った。
  • 世にも奇抜な展開の曲があると話題になり、いつのまにかグループの顔になってしまった一曲。クイーンでいうボヘミアン・ラプソディ的な。たぶん10年後20年後とかにもラジオ(があれば)でかかる曲です。
  • 突如その異形の姿を現し、多くのアイドルファンや業界人を「なにこの曲??」「nuanceって何者よ??」と動揺させた(と思われる)魔性の超インパクト・ソング。作詞・作曲はAI美空ひばりの曲を手掛けたことでも話題となっている佐藤嘉風氏。
  • nuanceがアイドル界に新たなポップスを提示した挑戦的な曲。サビのメロディとうねるベースラインから生まれる独特なリズムは人々をどんな時代の音楽にタイムスリップさせてしまうというのか。これはnuance完全オリジナルのダンスミュージックだ。

第8回アイドル楽曲大賞2019>> インディーズ_地方アイドル楽曲部門 4位~10位

 

僕の元推しでもあるミサキサン選出による「初めてのヌュアンス」プレイリストも紹介しておく*5

 

 

ホールワンマンライブ『HOME』

ここまで、過去のヌュアンスのワンマンライブを振り返ってみたが、改めて今月のワンマンライブにあたって明かされている情報を確認してみよう。

相変わらず豪華なバンド編成

今回も9人によるバンド編成。HIDEROWさん、Uさん、ケイコローズさん等、お馴染みのメンバーばかりで素晴らしい演奏が確定していると言っていいだろう。楽しみ!

 

演劇風の演出の復活

今回のワンマンライブでは待望の演劇風の演出が復活し、近藤茶さんが出演することが告知されている。先に書いた通り、僕はここ数年その演出がないことを寂しく思っていたので、個人的にはこれは激アツ!

 

芸人の出演

今回のワンマンライブで新たな試みとなるのが、芸人として、寺田寛明さん*6、ぎょねこのオジマアローさんが出演するという事だ。ヌュアンスは定期的に浅草にて「ミライサーカス」という芸人とアイドルが共演する対バンライブを組んでおり、その延長ということだろうか。楽曲ミライサーカスの途中で「ミライサーカスのオタク」として寺田さんが登場してネタを披露したのはめちゃくちゃ面白かったなぁ。今回のワンマンライブでもどのように登場してネタを披露してくれるのか…非常に楽しみである。

 

ヌュアンスのワンマンとは

ヌュアンスのワンマンライブは、単にメンバーが歌やダンスで観客を魅了する場ではない。ここまで紹介してきた様々な演出や素晴らしい演奏がステージ上で繰り広げられる総合エンターテインメントだ。

今月のワンマンのチケットは1000円~で現在各種プレイガイドや公式オンラインストアで販売中である*7。もし興味を持たれた方がいたら元町・中華街行の特急電車に乗って、県民ホールを訪れてみてはいかがだろうか。

eplus.jp

nuance045.thebase.in

 

 


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*1:今はSpotify O-EASTになっちゃった

*2:クラウドファンディングでの申し込みだった。現物が届けられたのはめちゃくちゃ遅かったが…

*3:妃菜さんがアルパカ、初音さんがフクロウ、恭美ちゃんがコアラ

*4:編成は変わることもある

*5:ここ1年の曲は入ってないけど…

*6:R-1ファイナリストの常連である。アイドルオタクとしても有名であり、現場でもよくお見掛けする

*7:公式オンラインストアではサイン入りチケットも買える