とあるKSDDのアイドル考察録

アイドルオタク9年目のKSDDがアイドルに関して色々考えてみます

世界人口80億分の1だよ、すごいね! ~「奇跡のn人」マーケティングの功罪~

アイドルオタクをやっているとよく聞く言葉の一つに「奇跡のn人」というものがある。世の中にそんなにたくさん奇跡があってたまるか、と思う時もあるが、そう言いたくなる運営やオタクの心理もわかる。改めてその言葉の持つ意味について考えてみよう。

 

 

「奇跡のn人」の例

ももいろクローバーZ

具体的には「奇跡のn人」と呼ばれるグループはどういった例があるだろうか?「奇跡の5人」でググって出てきたのは、まずは嵐、次いで5人時代のももクロについての記事だ*1

小松アナは涙目になりながら話を聞き、そして、「本当に正直ファンのみなさんはどうなんでしょうね…。ももいろクローバーZって奇跡の5人なんです。5人が絶妙に、だれか一人欠けてもももクロじゃないっていう、みんなでそう思って応援して、それが大好きで」とファンの想いを代弁するように思いを告白。

小松靖アナの「ももクロは奇跡の5人」発言にファン涙「代弁してくれた」 | マイナビニュース

この記事自体はモノノフとしても有名な小松アナがファンとして気持ちを述べているのに過ぎないが、結果的にメンバーの有安杏果さんが卒業して「奇跡の5人」時代は終焉を告げる。

idol-consideration.hatenablog.com

 

その後のももクロ”The Diamond Four”というプロジェクトを始動させて、この「4人」でやっていくのだ、という方針を打ち出した。そして、ももクロは2022年現在、4人での活動を継続させている。


www.youtube.com

 

でんぱ組.inc

でんぱ組.incはそのメンバーのキャラクターや、ストーリー性でブレイクしたグループの一つだ。特に”W.W.D”ではそのメンバー個々のキャラクター性を打ち出した歌詞がインパクトを与えた*2。「奇跡の6人」というワードを用いているわけではないが、その続編として発表された”W.W.D Ⅱ”では、明確に「この6人であることの意義」をうたっている。

この6人だから 這い上がれたんだ

絶対 絶対 誰も欠けちゃいけないんだ
W.W.D Ⅱ/でんぱ組.inc


www.youtube.com

この曲のMVが発表されたのが2013年8月のことだが、2017年にはメンバーの最上もがさんが脱退し、「この6人」時代は終焉を迎える。

そして、その後は鹿目凛さん・根本凪さんの加入、夢眠ねむさん、成瀬詠美さんの卒業、高咲陽菜さん、愛川こずえさん、小鳩りあさん、空野青空さん、天沢璃人さんの加入、根本凪さんの卒業…と、大きくメンバーが変動している。

 

チャオ ベッラ チンクエッティ

チャオベラはハロプロのグループで元々「THE ポッシボー」というグループ名だったが、2015年夏に心機一転この名前に改名した。グループ名の意味はイタリア語で「美少女5人組」という意味だそうだが、秋にはメンバーの秋山ゆりかさんが卒業し、早々に4人組となってしまった。

そして、グループ自体も2018年に解散を迎える。

 

フィロソフィーのダンス

フィロのスは結成時こそ5人組だったが、最初期に一人辞めてから、ほとんどの期間を現体制の4人で活動してきた。代表曲の一つ”ベスト・フォー”の前振りのMCではだいたい「この4人が最強の4人だってことを、ここ、○○(場所)で証明して帰りたいと思います!」みたいなことを言いがちである。

We will survive

We'll be best4


www.youtube.com

そして、11月のおとはすこと十束おとはさんの卒業によって現体制の「ベスト・フォー」は終わりを告げることとなる。そして新メンバーの加入も発表されており、今はオーディション動画が公開されている。


www.youtube.com

 

「奇跡のn人」マーケティングのメリット

少年漫画的ストーリー

現代アイドルのマーケティングにおいて必須の要素と言われるのがその「ストーリー性」である。

biz-journal.jp

そしてメンバーの”絆”というファクターはストーリーを描きやすい。要は、「個性がバラバラのn人が奇跡的に集まり、ぶつかったりしながらもその絆を深め、数多の障害を乗り越えて大きな目標を達成する」っていう少年漫画的なストーリー皆好きでしょ、という話である。所謂ジャンプ三大要素「友情・努力・勝利」と言い換えることもできる。

 

オタク・エンゲージメントの加速

そして、ピュアなオタク達はそのストーリーを素直に受けとめ、「このグループは奇跡的に最高のメンバーが集まった最高のグループなんだ…!俺が推さなきゃ誰が推す!」とオタク・エンゲージメントを高めてより熱狂する。

僕は生粋のジャンプっ子だし、こういうベタなストーリーは大好きなので、ステージ上で個性的なメンバーによる嚙み合ったパフォーマンスを見ると心の底から「このn人が集まったのは奇跡だ!」と思って熱狂してしまう。少年漫画的なベタなストーリーでもそれをリアルな人間が表現すると面白くなる。

 

アイドルのモチベーション増加

そしてこのストーリーはアイドル側にも良い影響を与える。当たり前のことだが、メンバー間の絆が強い方がパフォーマンスの強度が増す。

また、「このn人が最高のメンバーだ」とメンバー達自身が考えていると、グループを途中離脱するリスクも下がる*3

 

 

「奇跡のn人」マーケティングのデメリット

ここまでメリットを整理してきたが、デメリットがあることも否定できない。

「n人」が崩れた時のインパク

あまりにも「このn人が集まったのは奇跡!」とか言いすぎると、卒業などでそれが崩れた時にオタク側にもアイドル側にも衝撃が大きくなる。例えば、前述したでんぱ組.incからもがちゃんが卒業し、新メンとしてぺろりん先生根本凪さんが入った時に、彼女たちを認めないオタクが散見された。

彼女らに罪はないが、オタク側の心情もよくわかる。それまで散々「この6人じゃなきゃダメ」と言ってきたのにメンバー入れ替えをしてしまうと、今まで歌ってきたのは何なんだよ嘘じゃねーか、と言われても仕方ない話だ*4

僕はオタク歴もそこそこあるDDなので、どんなに安泰に見えてもアイドルの卒業・新規加入があり得るという心構えを持っているが、単推しでオタク歴の短いオタクが卒業に心を痛めているのを見ると、あんまり「奇跡のn人」マーケティングをやりすぎるのもどうなの?と思ってしまう時がある。

 

メンバー達への過度な期待

アイドルグループでメンバー達が素晴らしいバランスになった時、僕達オタクは「現体制メンバーによる成功」を強く望む。それ自体は全然問題ではないが、それがアイドル達に対する「呪縛」になってほしくないな、と思う。

例えばそういうオタクの気持ちにビジネスチャンスを見出した運営が、「ストーリー性」を実現するためにアイドルを過度に追い込んだりするケースも地下ではみられる。

また、アイドルが卒業を発表する時、その文面には「申し訳ございません」と書かれることが多い。その度に僕は「謝らなくていいんだよ…」と思う*5。もちろん卒業は寂しいことだが、新しい道へ進むための卒業について、申し訳なく思う必要なんて全くないし、胸を張っていいことなのだ。だから、卒業の文面は「今までありがとうな!楽しかったぜ!!」くらいで良いのだ。

申し訳なく思わせてしまう要因の一つに、「奇跡のn人」マーケティングがあるとすればそれは是正すべきことではないだろうか。

 

総括

僕が今推しているアイドルグループは皆素晴らしいメンバー達が集まっていて、そのバランスも良い。「奇跡のn人」と言っていいし、この中の誰が欠けてもいけないと思うことも多い。

でも、過去を振り返ってみると、杏果が抜けてもももクロはやっぱり素晴らしいグループだし、ぁぃぁぃが抜けたエビ中は更に結束して良いパフォーマンスを見せるようになったし、10人になったでんぱ組.incも新しいエンタメの形を見せてくれている。「誰が欠けてもいけない」というのは後から振り替えってみると概ね幻想だ。

今のメンバーは「奇跡のn人」だし、新メンバーが入ったり、既存メンバーが卒業しても、きっとそれは新しい「奇跡のn人」と言えるのではないだろうか。

 

人が出会って、別れて、また出会って…それを繰り返すことの全てが奇跡なのだ。

 

 

タイトルは「フィロソフィア/フィロソフィーのダンス」より


www.youtube.com

 

*1:ちなみに黒子のバスケもひっかかる

*2:歌いながら泣くこともよくあった

*3:グループを途中離脱すること自体が悪いと言うつもりは全くないが、一般的にはグループにマイナスに働く事象だろう

*4:個人的には作詞のヒャダインに結構責任があると思う

*5:もちろんアイドル側に責があるクソみたいな卒業理由の時は別だ