とあるKSDDのアイドル考察録

アイドルオタク9年目のKSDDがアイドルに関して色々考えてみます

ドリチケ持って扉の中へ ~ライブハウスのドリンク問題~

先日、ラブリーサマーちゃんのツイート…ポストが一部界隈で物議を醸した。

 

このツイートに対しては、大いに賛同する声や、反対にライブハウスを擁護する声などが見られた。ちなみに僕は大いに賛同した方だが、改めてライブハウスでのサービスについて考えてみた。

www.j-cast.com

 

 

ライブハウスの法律上の位置づけ

まず前提として、多くのライブハウスは飲食店として営業許可を得ている。

興行場法では、映画・演劇・音楽・スポーツ・演芸などを見聞きさせる施設を「興行場」といい、経営するには許可が必要だと定められています。法律上、興行場について、これ以上に細かい定めはなされていません。

そこで、現状の運用では、飲食店での「集客」の手段として映画やライブをおこなっている店については、興行場にあたらないと解釈して営業しているようです。

ライブハウスの1ドリンク制も、「飲食をせずにライブだけを見るお客さんはいません。飲食がメインで、ライブは集客の手段なんです。だから『興行場』にはあたりません」という興行場法の適用を回避する言い分を確保するためのものだと考えられます。

ライブハウス、法律上は「飲食店」 1ドリンク制をめぐる誤解を弁護士が斬る - 弁護士ドットコム

上記サイトにもあるように許可取りが大変なことなどを理由に興行場ではなく飲食店として営業しているライブハウスが多い。そして、飲食店であるがゆえに、冒頭のツイートにあるような1ドリンク制という仕組みが取られている。

一方でZeppなどの大型のライブハウスは興行場許可を取得しているようだ。映画館やホール等と同じ扱いであり、こういった場所で行われるライブにおいては、ドリンク代は本来、不要である。

 

 

ライブ体験の全体像

さて、ここでアイドルのライブに参加する時のジャーニーを整理して、ライブハウスが関わる主要なシーンを確認してみよう。チケットを握りしめて*1家を出て、ライブハウスの前に到着したところからスタートだ。

 

整列&入場

オルスタのライブだと、チケット購入時に整理番号が割り振られ、その順番に並び、入場していくこととなる。代官山UNITのように厳密に並ぶ位置を指示されるケースもあれば、新宿BLAZEのようになんとなく集まっていればいいケースもある。基本的には整理番号を1番ずつ、後半は2番ずつ、5番ずつ…と呼び出されるので入っていく。

この時、デカめのライブだとイベント会社が仕切ることもあるが、多くはライブハウスのスタッフによって仕切られる。入場するときにはドリンク代を支払う。また、対バンだと「お目当て」を聞かれるのでそれに答える*2

 

位置取り

オルスタのライブの場合、位置取りは極めて大事な要素だ。モッシュに加わりたいか、静かに見たいか、前のオタクの身長、柵ジャンしたいか、見やすい段差の最前を取るか、推しがいるのは上手か下手か、スピーカーが近すぎないか…色んな要素を考えて位置取りをする。

 

ドリンク交換

位置取りの前か後か、ライブの前か後か、タイミングはケースバイケースだが、入場時に購入したドリンクチケットと引き換えにバーカウンターでドリンクを受け取る。僕の場合は開演前にビールと引き換えてライブ序盤で飲み切る事が多い。

終演後早々にバーカウンターは締め切られることが多い。

 

ライブ

楽しむ!

 

特典会

アイドルのライブだと終演後そのまま特典会に移る。フロアやステージで特典会が行われる。この時の仕切りは基本的にはアイドル運営でありライブハウス側のスタッフが関わることは少ない。

 

 

ライブハウスのサービス

ジャーニーを俯瞰してみると、ハード面では空間そのものや音響設備が、ソフト面では入場の仕切り、飲食物の提供というのがライブハウスが担う主な役割になる。今回ラブサマちゃんが問題にしているのは後者のソフト面でのサービスの悪さだが、実際のところどうだろうか?

 

入場の仕切り

入場の仕切りのオペレーション面に関しては多くのライブハウスで最適化されている印象だ。たまにデカいライブでイベント会社がイケてない仕切りをしてるとイライラしちゃう。

ただ、僕らのような日常的にライブに行く層と異なり、たまにしか行かない人や初めて行く人にとっては分かりづらいシステムとなっているケースも多い。

また、入場時のドリンクチケット購入は現金のみとなっているケースも多い。いや普通にチケ代と合わせて先に領収しとけばええやん!と思ってしまう*3

 

ドリンクの質

これに関してはラブサマちゃんが言うように質の悪いライブハウスが多い。アルコールなしのライブでミネラルウォーターのペットボトルに600円払ってる時は毎回ふざけんな!と思うし、プラカップで少量のビールを提供されるのも萎える。ハイボールとかたまに頼んでみても、飲めたもんじゃねえな…という時も多い。瓶や缶の既製品が提供されている時はそれ一択だ。

 

ドリンクのサービスが良い/悪いライブハウス

個人的にいくつかドリンクサービスの良い/悪いと思うライブハウスをあげてみよう。

 

東京キネマ倶楽部鶯谷

ここの弱点は「ペットボトルドリンクがないこと」だ。手を塞ぎたくない場合はペットボトル飲料がありがたいが、ここではすべてのドリンクがプラカップで提供されて不便極まりない!反面、ほとんどのライブハウスがドリンク代を600円に引き上げる中、500円をキープしているのはありがたい点。

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UNIT(代官山)

他のドリンク自体は変哲もないが、昔、ミネラルウォーターを頼んだら、会議で出てくるような小さいペットボトルを渡された。さすがにこれはちょっと…

 

WOMB(渋谷)

ここは最近ドリンク代を700円に引き上げた。いや、原価高騰はわかるけど、このドリンクで700円!?となってしまう。

 

Spotify O-crest(渋谷)

ここはヤッホーブルーイング系の缶ビールが置いてあるので素晴らしい!瓶のハートランドも選べて良い*4

 

JAM(西永福)

西永福JAMは個人的に最もドリンク面で頑張っているライブハウスだ。ドリチケに100円とか追加するだけで、こだわりのクラフトビールが飲める。ソフトドリンクなら2杯まで飲めるという点もナイスだ。ちなみに、冒頭でラブサマちゃんのツイートにツリーで言及されている新代田FEVERも同じシステムだ。


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Loft(新宿)

ドリンク自体は普通なのだが、ドリンクチケットで料理も買えるというのがポイントだ。飯を食えるカウンターもあったりして雰囲気もいいので僕の最も好きなライブハウスの一つだ。


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と、具体的な例を出してみたが、一つ断っておきたいのは、僕は上でディスったライブハウスを嫌いなわけではなく、むしろ好きな方だ。キネマ倶楽部の独特な雰囲気や階段のあるステージは唯一無二だし、UNITの強い低音にはゾクゾクする。WOMBのクソデカミラーボールや上下動するビジョンは迫力満点だ。

僕が言いたいのは、これらのライブハウスでドリンクサービスもよくなればもっと素晴らしい体験が提供できるのに…ということだ。

 

なぜライブハウスは頑張らないのか

このようにライブハウスのサービス面は大体悪い。その理由としては、競争原理が働きにくい構造と、サービス軽視の風土があるように感じる。

競争原理が働きにくい構造上の問題

まず一点目は構造上の問題だ。僕達オタクにとってライブに行くかどうかは、出演するアイドルによって決まる。クソみたいなライブハウスでも推してるアイドルがライブをやるなら行くし、めちゃくちゃ良いライブハウスでも界隈違いのアイドルのライブには行かない。

身も蓋もないことを言うと、ライブハウスがいくらサービス面で努力しても客はたいして増えないのである。そういう状況でサービス面を強化しようとするライブハウスが少ないのもそれはそれで仕方がないことかもしれない。

 

サービス軽視の風土

僕の主観も入っているが、ライブハウスの運営というのは音響やステージなどのクリエイティブ面に対するこだわりを見せる一方で、フードやドリンクというサービス面を軽視しがちな印象がある。なんというか…ラーメン屋の頑固親父的な「うちは音で勝負だ!客には媚びねえ!」みたいな思想の持ち主が多い気がする。

頑固さが突き抜けていくと昔下北沢にあったライブハウスのように、アイドルのライブを告知しない、というようなしょうもないムーブに走ったりすることもある。

 

ライブ体験におけるライブハウスの役割

コロナ禍を経て、僕が改めて感じたのはライブという体験の「強さ」だ。コロナ初期の頃には僕もいくつもオンラインライブを見たが、正直言って、全然覚えてない。ソファでゴロゴロしながらお酒を飲みながらライブを見る…楽しいっちゃあ楽しいんだけど、あとから思い出すと、何があったっけ?となってしまう。

 

思うに、ライブ体験というのは家を出た瞬間から帰るまでを指すのである。暑い日に汗だくになりながら道玄坂を登ったり、クソ番で見づらかったり、声を合わせてコールを叫んだり、終演後にオタクと飲んだり…プラスのこともマイナスのことも引っくるめた体験がライブ体験なのである。

 

そういうオンラインでは得られない体験を求めて僕らはライブに赴く。その体験の良し悪しにおいて、ライブハウスのサービス面で果たす役割は結構大きい。ラブサマちゃんが放った問いに対して、ライブハウス運営達は真摯に向き合うべきではないだろうか。

 

 

タイトルは「平日ナイトフィーバー feat.日向ハル/絶対忘れるな」より


www.youtube.com

 

*1:と言っても最近は電子チケットが主流だが

*2:チケットバックという仕組みのために必要になる。僕のようなKSDDだと言葉に詰まることがある

*3:たまにそういうイベントもある

*4:あと、Spotifyプレミアム会員だと追加で1Drink無料で飲めるというのもよい