つい先日、nuanceなどを運営するミニマリングスタジオと、代代代などを運営するDEMON TAPESが経営統合を行うという事が発表された。
「経営統合」と聞いて思い出したのは、夏に発表されたディアステージとパーフェクトミュージックの経営統合だ。「事務所の経営統合」からアイドル業界をを見てみよう*1。
経営統合とは何か?
そもそも「経営統合」というのは何なんだろうか*2?どういう位置づけなのか。。。という事を整理しようと思って、以前読んだM&Aの本を引っ張り出してみたのだが、読んでるうちに「こんなこと、絶対アイドル運営考えてなくね?」という気がしてきたので「デジタル大辞泉」記載の説明にとどめることにする。
二つ以上の会社が共同で持ち株会社を設立し、その傘下に入ること。同じ親会社をもつことで戦略を共有し、会社同士の関係を深めるもの。合併とは異なり、資本や組織は一本化されない。
つまり、やりたい方向は一緒だし協力するけど、お互いこれまで通り個別に動こうぜ、という事である。
アイドル運営事務所が経営統合することのメリット
M&A総研によると経営統合のメリット・デメリットとしては下記のものがあげられる。
メリット⇒人事やシステム統合の手間を省ける、戦略的意思決定の迅速化、リスク分散
デメリット⇒シナジー効果が発生しにくい、部門や機能の重複によるコスト増加
出所:合併と経営統合の違いとは | M&A・事業承継の理解を深める
これを踏まえて、アイドル運営事務所が経営統合する事の意義を考えてみよう。アイドル運営は通常の事業会社と異なり、かなり特殊な業態であり、規模も小さい。統合のコストやリスク分散に関する話は多分無視していいだろう。
そうすると、結局統合の意味として最大のものは「戦略的意思決定の迅速化」にあると考えられるのではないか。そしてアイドル運営にとって、運営戦略というのは即ちマーケティング戦略だ。マーケティングを迅速かつ効果的に行うために経営統合を行ったという事だろう。
経営統合によるマーケティング戦略の迅速化・効率化
具体的にはどういったものが考えられるだろうか。いくつか想定されるものを挙げてみよう。
やはり両事務所のグループが一堂に会するイベントの開催や、専属っぽいクリエイターが他のアイドルにも曲を書いたりするのではないだろうか。実際、早くもディアステとパフェミュでは#DSPMというタグをつけてイベントを開催している。
経営統合が映し出すアイドル業界
ディアステージとパーフェクトミュージックが経営統合した時には、アイドルスケジューラーではそれに関する考察記事がupされた。
「でんぱ組.inc」のブレイクもメンバー脱退が続き、また後続グループの成長やブレイクがイマイチ伴わないディアステージ陣営と、「バンドじゃないもん! MAXX NAKAYOSHI」が“プチブレイク”するも世間的には地下アイドルの領域を突破できず、また他グループも成果を出せないインディペンデントな運営に限界を感じたパーフェクトミュージック陣営が、お互いに感じた限界をなんとか打破する為の「苦肉の策」とも言える今回の統合は、シーン全体の問題点と今まで勃興・乱立してきた、「地下アイドル乱立時代」が終焉するきっかけになる出来事にも思える。
出所:地下アイドル乱立時代終焉へ。運営事務所統廃合加速、所属アイドルの“品質低下”、悪質運営問題などでシーン縮小化も - idol scheduler(アイドルスケジューラー)
しかし、一方でここで挙げられた問題が、経営統合によって解消されるという印象はない。でんぱ組のピンチをパフェミュがどうにかできるわけでもなかろう。でんぱ組はライブのバックダンサーとしてディアステの他グループを招集したりしており、パフェミュとの経営統合による大きな変化はまだ見られない。
また、ミニマリングスタジオとDEMON TAPESの経営統合に関しても、言い方は悪いがここ2つが組んだからと言って、何か大きく変わるようなものでもないだろう。お互い、東京・大阪に都合よく頼れる別法人ができた、程度の考えではないか。
という訳で、ここまで色々と書いてきたが、経営統合は業界の変化を象徴する事件でもなんでもなく、単に「信頼できる人たちだし、チーム組んだ方がやりやすそうだね」くらいのものではないだろうか。
うーん。。。オチがしょぼい!*3