とあるKSDDのアイドル考察録

アイドルオタク9年目のKSDDがアイドルに関して色々考えてみます

tipToe.の作られた「青春」

tipToe.に惹きつけられるのは何故だろうか?

 

tipToe.は6人組アイドルグループだ。昨年のアイドル楽曲大賞のインディーズ部門8位、アルバム部門3位を取っており、いわゆる「楽曲派アイドル」の一角と言えるだろう。楽曲大賞にランクインしたことで興味を持った僕は、4月ころからライブに通うようになった*1

そんなtipToe.だが、来年の1月のライブをもってメンバー5人が活動を終了するというショッキングなニュースが飛び込んできた。この機にtipToe.の魅力について考えてみた。

ameblo.jp

 

 

グループのコンセプト

もともとtipToe.には3年間で卒業するというルールがある。メンバーも運営も、限られた時間をどのように過ごすか、というテーマに対して向き合うためだ。公式サイトには次のように記載されている。

「みんなで青春しませんか?」がコンセプトの等身大センチメンタルアイドルグループ「tipToe.」(ティップトウ)。

メンバーでいられるのは3年間。限られた時間をメンバーそれぞれが精一杯全力で駆け抜けていきます。

グループ名は「少しだけ背伸びして、今よりも高い所に届くように」という思いを込めて「背伸びする」(=「つま先で立つ」)を意味する英語「stand on tiptoe」から。

tipToe.のキーワードは「青春」と言えるだろう。では、どのようにtipToe.は「青春」を表現しているのだろうか?

 

tipToe.の楽曲

tipToe.の楽曲には「青春」を意識したものが並ぶ。例えば、複数の曲を使って、架空の女子高生の一連のストーリーを描くことで青春を表現している。初期の名曲「特別じゃない私の物語」→「夢日和」の流れはMVでも明確にそれを示している。


tipToe. - 特別じゃない私の物語 Music Video


tipToe. - 夢日和 Music Video

 

プロデューサー本間さんのブログでも、そのような説明がなされている。一方で、メンバー自身を描いた楽曲も意図的に制作されており、そういった楽曲にオタクはtipToe.のメンバー自身の「青春」を感じてしまう。

tipToe.の楽曲の多くは地方都市に住む一人の女子高生に起きた様々な物語を描いていて、曲によってはメンバーたちにも重なるところがありつつも基本的にメンバーたちはその子の物語を体現するパフォーマーとして楽曲に向き合ってもらうようになっている。しかし、この曲はその子の歌というよりも今のメンバーたちの歌というイメージが強い。

tipToe.楽曲解説Vol.11 – The Curtain Rises | 6joma-Blog

 


tipToe. - The Curtain Rises Music Video

 

 tipToe.のアートワーク

tipToe.がその「青春」を演出するために、こだわっているのは楽曲だけではない。地下アイドル運営では「プロデューサー」が、各種の楽曲やコンセプトの方向性を決めるケースが多い。楽曲派アイドルの場合だと、それとは別に楽曲面の統括として「サウンドプロデューサー」という役職を置いていることもある*2。さて、tipToe.の場合はそれに加えて「ビジュアルプロデューサー」という役職を置いており、写真家の長谷川圭佑さんが担当している。

hasegawa-keisuke.com

写真のことは正直全然わからないのだが、長谷川さんの公式サイトを見ると、少女をモチーフにして、ダークだが美しい、独特な世界観を描いているようだ。そんな少女を撮影するプロがMVやアー写などをプロデュースしているのだ。そりゃあ、いいものが出来上がる。最新のアー写からも青春特有の美しさ、儚さが感じられる。

 

 本物の「幻」

このように、tipToe.は音楽面・ビジュアル面の両方から「青春」を演出するための仕掛けがふんだんに施されたアイドルだ。このフォーマットの中に、年頃の女の子を組み込めば、そりゃあエモくなるだろう!いわば、僕たちオタクが見ているのは運営の大人たちに演出・増幅された「幻」としての青春だ。

しかし、そこで生まれているメンバー(そしてオタク)の感情や経験はどうしようもなく「本物」だ*3。彼女たちが流す涙や発する言葉に嘘はない。「特別じゃない私の物語」にこんな一節がある。

ここで私が歌うこと 君の胸に届きますか?

楽しいって想いも 嬉しいって想いも 全部本当のことだよ

 

僕がアイドルを好きな理由の一つは、夢を追う若い彼女たちに自分が過ごせなかった「青春」を託しているからだ。若い女の子が、自らの未熟さや理不尽な大人などの壁にぶつかりながらも、懸命に歌い、踊り、生きる姿を見ると、自分に失われた「青春」を見ている気がして応援したくなるのだ。僕がアイドルに求める「青春」は、tipToe.が描きだした「本物の幻」そのものだった。

TIFで初披露された「特別じゃない私たちの物語」には、こんな一節がある。

全部叶うには足りなくて 瞬きする間に過ぎてって
愛おしいあの瞬間を 青い春と呼ぶのでしょうか

 

現体制が終了するまで残り僅か。僕は彼女たちが描き出す愛おしい「青い春」を見逃さないようにしよう。

 

 

追記:第1期終了時に書いたエントリはこちら。

idol-consideration.hatenablog.com

 

 

*1:正直気づくのが遅かったな、と後悔している。

*2:tipToe.の場合は本間さんが両役職を兼任している

*3:というか、仕掛け人である本間さん自身に生まれる「感情」、「経験」も本物ではないだろうか。